こんばんは、ヤギ仙人です🐐。投資の世界で圧倒的な成果を上げた先達を紹介する「投資家列伝」。第2回は「成長株投資の父」と呼ばれるフィリップ・フィッシャーを紹介します。独特の成長株の選び方をぜひ参考にしてみて下さい。
「成長株投資」という概念を広めた立役者
フィリップ・フィッシャーは20世紀を代表する米国の投資家です。彼の功績は「成長株投資」という概念を広めたことにあります。

「成長株投資の父」という彼の呼び名はそれに由来します。独自の厳格な投資基準によって、総合科学メーカーのダウ・ケミカル、携帯電話のモトローラ、半導体メーカーのテキサス・インスツルメンツ、特殊ガラスのコーニングなど、後に米国株式市場を代表する数々の有望な企業を発掘しました。
特にあのウォーレン・バフェットに与えた影響は大きく、「バリュー株投資の父」と言われるベンジャミン・グレアムと並んでバフェットの師と目されています。バフェットは「私の85%はグレアムから、残りの15%はフィッシャーからできている」と語っていますが、実際の投資手法を見る限り むしろフィッシャーからの影響を強く受けているように思います。
この「株式投資で普通でない利益を得る」はフィッシャーの代表的な著作で、発行当時から現在まで長く読み続けられています。この本には成長株を選ぶ厳格な投資基準の解説に加え、彼の三男で同じく投資家の道に進んだケネス・L・フィッシャーから見た父親の人となりが描かれています。

フィリップ・フィッシャーは1907年生まれ。カリフォルニア大学バークレー校を経てスタンフォード大学を卒業しました。1931年 サンフランシスコに投資顧問会社「フィッシャー・アンド・カンパニー」を設立。当時から金融の中心はすでにニューヨークであるにも関わらず、サンフランシスコにオフィスを構える所にもフィッシャーらしさが表れています。
性格は生真面目で仕事に対しては厳格。息子からするとあまり親しみやすい父親ではなかったようです。メディアへの露出を嫌い、投資顧問業でも顧客を極めて少数に限定していた所からあまり社交的ではなかったことが窺えます。毎朝、正確に決まった時間にオフィスに出勤する姿は18世紀の哲学者カントを彷彿とさせます。
フィッシャーの投資手法の特徴はどこにあるか?
そんなフィッシャーの投資の真骨頂は、成長株を選ぶ彼独自の投資基準にあります。各種の投資サイトでは整理された表現で紹介されていますが、今回は彼の特集なので先述の本の原文のままで紹介します。
| 株について調べるべき15のポイント | |
|---|---|
| ① | その会社の製品やサービスには十分な市場があり、売り上げの大きな伸びが数年以上にわたって期待できるか |
| ② | その会社の経営陣は現在魅力のある製品ラインの成長性が衰えても、引き続き製品開発や製造過程改善を行って、可能なかぎり売り上げを増やしていく決意を持っているか |
| ③ | その会社は規模と比較して効率的な研究開発を行っているか |
| ④ | その会社には平均以上の販売体制があるか |
| ⑤ | その会社は高い利益率を得ているか |
| ⑥ | その会社は利益率を維持し、向上させるために何をしているか |
| ⑦ | その会社の労使関係は良好か |
| ⑧ | その会社は幹部との良い関係を築いているか |
| ⑨ | その会社は経営を担う人材を育てているか |
| ⑩ | その会社はコスト分析と会計管理をきちんと行っているか |
| ⑪ | その会社には同業他社よりも優れている可能性を示唆する業界特有の要素があるか |
| ⑫ | その会社は長期的な利益を見据えているか |
| ⑬ | 近い将来、その会社が成長するために株式発行による資金調達をした場合、株主の利益が希薄化されないか |
| ⑭ | その会社の経営陣は好調な時は投資家に会社の状況を饒舌に語るのに、問題が起こったり期待がはずれたりすると無口になっていないか |
| ⑮ | その会社の経営陣は本当に誠実か |
フィッシャーは投資対象を選ぶ際、関係者への「聞き込み」を重視しました。的確な質問で真実に迫る姿はまるでベテラン刑事のようです。中でも重視していたのがライバル企業へのヒアリング。ライバルだからこそ、その企業の強み・弱みを客観的に把握しているのです。私たち個人投資家はフィッシャーのようにヒアリングを行うことはなかなか難しいですが、上記のポイントは公開資料で確認できるものもありますので参考にしてみるのも良いでしょう。それにしてもポイントが多岐に渡りますね。
「こんなにポイントが多いと、これをクリアする会社なんてほとんどないじゃん」と思ったあなた。あなたの考えは正しいのです。
フィッシャーは厳選した少数の銘柄への投資を推奨していて、投資の基本とも言われる分散投資については否定的なのです。
「たくさんの銘柄を保有している人の多くは、優れた投資家というよりも、自信がない人だ。もしたくさんの銘柄を保有している投資家が直接または間接的に経営陣の様子を観察できないのであれば、保有銘柄が少なすぎる場合よりも、むしろ悪い結果に終わるだろう。」(「株式投資で普通でない利益を得る」より)
従って、15のポイントをクリアする銘柄は多くなくて良いのです。フィッシャーは個人投資家への銘柄選定のアドバイスとして「5人の伴侶を選ぶつもりで」と言っており、個人が保有する銘柄数としては、5〜10銘柄が適切だと考えていました。そして、「伴侶を選ぶつもりで」ということは、一生を共にするぐらい真剣に選べということなのです。
フィッシャーの投資手法は3つの要素に集約できる
筆者はフィッシャーの投資手法の本質は3つの要素に集約できると思っています。その3つとは、「成長株」「集中投資」「長期保有」です。

独自の厳格な投資基準で発掘した「成長株」に、いたずらに分散せずに「集中投資」し、ファンダメンタルズが継続する限り「長期保有」することで莫大な利益を得る。実際、フィッシャーは自ら発掘した株をかなりの長期間保有しており、モトローラに至っては本当に死ぬまで保有していました。
この投資手法のエッセンスを踏襲したのがウォーレン・バフェットであり、だからこそあれだけの驚異的なリターンを上げることが出来たのです。フィッシャーの投資手法の功績については、もっと評価されて良いと筆者は思います。
そして、もう1つ間違ってはいけないのがフィッシャーの「成長株」の概念です。彼が考えていた「成長株」は、現在のハイテク株のように成長に特化した企業の株ではありません。15のポイントをよく読めばわかりますが、「優れた経営力と強固な組織基盤を持ち、業界平均を上回る売上と利益の成長を長期間にわたって持続できる企業」の株式のことです。つまり、「成長株」と聞いた時に私たちが抱く印象よりももっと堅実なのです。
伝説と言われた投資家の手法を参考にする時は、彼が何を求めていたのかの本質を理解することが重要なのです。
今回は「成長株投資の父」と呼ばれた米国の投資家フィリップ・フィッシャーを取り上げました。ではまた!
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