こんばんは、ヤギ仙人です🐐。現代の投資に資する著作を紹介する「投資の名著」。第2弾は「ウォール街のランダム・ウォーカー」です。とにかく、出版された当時は革新的で色々と物議をかもしました。さっそくどんな本なのか見て行きましょう。
この本の革新性はどこにあったのか?
本書は、日経平均やS&P500など株価指数に連動する運用方法である「インデックス投資」の概念を初めて世に送り出した草分け的存在の書籍です。

この本のアメリカでの初版(写真:右)が出版されたのは、今から50年以上前の1973年。当時は「インデックス投資」という言葉すら存在せず、「パッシブ運用」「パッシブ投資」という用語を使っていました。
当然、そのような金融商品もなく、この本の趣旨に賛同したジョン・ボーグルがCEOを務めるバンガード・グループによって世界初となる「インデックス・ファンド」が売り出されたのは1977年でした。しかし、購入時の手数料をゼロに設定して売り出したにも拘らず、売れ行きはさっぱりだったと言います。
当時のアメリカの証券業界は、アナリストはテクニカル分析派とファンダメンタル分析派に分かれ、取引は個別株か今でいうアクティブ運用の投資信託が中心でした。

そこに、これまでの商慣行のほぼすべてを否定する書籍が出版されたワケです。証券業会からは、教会によって天動説が正しいとされていた中世に地動説を唱え、宗教裁判にかけられたガリレオ・ガリレイのような扱いを受けることになります。
『例えば、週刊ビジネス・ウィーク誌の株式市場担当者は、本書をろくすっぽ読みもしないで、紙屑籠に投げ捨てたものだ。彼によれば、良くも悪くも市場平均リターンを約束するというインデックス運用の考え方は、好意的に見ても「ナイーブな素人考え」であり、もっと辛らつに言えば「不謹慎そのものだ」と切り捨てた。投資家がなぜ平均リターンで我慢しなければいけないのか、というのだ。』(同書「五十周年記念版(第十三版)まえがき」より)
インデックス投資の論拠とその後の躍進
著者であるバートン・マルキール氏は、データの分析から平均的な投資信託が分散投資されたインデックス・ファンドにパフォーマンスで勝つことが出来ないことを指摘しました。最新のデータでも、2003年から2022年までの20年で積極運用ファンドの約90%がベンチマークとしている株価指数に負けている事実があります。その上で、彼は以下の2つの考えを提示します。
❶ ランダム・ウォーク理論
株価の動きには規則性がなく、過去の変動とは一切関係ないとする仮説。テクニカル分析の有効性を否定している。
❷ 効率的市場仮説
現時点での株価の動きには新たな情報がすでに織り込まれており、超過リターンを得ることは出来ないとする仮説。
つまり、株価の動きは予測不能であり、人間がどれだけ調べたり極秘な情報を入手したとしても、それによって利益を上げることは難しい、ということです。
そこから、広く分散されたインデックス・ファンドを保有し続けることこそが最強の投資戦略であるという「インデックス投資」の概念を導き出したのです。
先述した通り、証券業界の「不都合な真実」を指摘した本書は発売当初、業界からの激しいバッシングを受けました。

しかし、投資のパフォーマンスという結果が伴えば、手のひらを返すのが人間という生き物です。「インデックス投資」という投資手法は、米国のみならず日本においても最強の投資戦略として定着することになります。
『今日ではインデックス投資が最善の運用戦略だという考え方は、広く受け入れられている。実際、現在保有されている株式投資信託の資産の半分以上が、インデックス・ファンドで運用されている。これに加えて何兆ドルもの資金が、ETFと呼ばれる取引所上場インデックス・ファンドで運用されている。』(同書「五十周年記念版(第十三版)まえがき」より)
どんな人が読むべきなのか?
世界の株式市場で「インデックス投資」という概念を普及させた本書ですが、どんな人が読むべきなのでしょうか?
- インデックス投資の生まれた経緯を知りたい人
- 物事の原理を理解した上で行動に移したい人
本書では、「インデックス投資」の概念がどのようにして生まれたのかについては著者の思考過程が明らかにされていますし、物事の原理を知った上で行動に移したい理論家肌の人には打ってつけの本だと思います。
ひとつ問題点を挙げるとすると、著者がこの本を「投資全般にわたる総合的な教科書」にしたい意向があるため、版を重ねるに従ってやや枝葉が多くなってきている印象を受けます。「総合的な教科書」は別の機会を設けて頂き、この本は「インデックス投資」一本に絞って欲しかったなあ、というのが筆者のホンネです。かと言って、本書の価値が低下するワケではまったくありませんが。
今回は投資の名著「ウォール街のランダム・ウォーカー」を取り上げました。投資で悩む人が読むべき本があれば、また取り上げたいと思います。ではまた!
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