こんばんは、ヤギ仙人です。皆さんはインデックス投資をしていますか? している人なら米国株が今後どうなるか気になりますよね。というのは、高い確率で米国株がインデックス投資の対象になるからです。実は米国株には、ここ30年ほど気になる傾向があります。それは「株式における収穫逓増の法則」とも言うべきもので、今回は仮説も含めてそれを検証してみたいと思います。
米国株式市場の拡大は続いている
まずは伝説のファンドマネージャー/ピーター・リンチのこの言葉から。
「最近、株価は高値になるにつれて早く動くようになった。二五〇〇ドルから五〇〇〇ドルになるまでには八年と三分の一年かかったが、五〇〇〇ドルから一万ドルまでには三年半である。一九九五~九九年には、前例のない五年連続二〇%以上という利益をもたらした。それまでは、市場が二〇%の利益を二年以上続けてもたらしたことはなかったのである。」(「ピーター・リンチの株で勝つ」プレミアム版への序章より)
ピーター・リンチがこの文章を書いたのは恐らく2000年になる前だと思いますが、確かにその頃から米国株式市場は豊穣とも言える時期を迎えていました。
これは、アメリカの代表的な株式指数「ダウ平均」の長期チャートですが、1994年頃から勾配が急角度になるのがおわかりいただけると思います。この間の米国経済と株価の相関関係を見るために、1992年から2023年までの30年間のアメリカのGDPとダウ平均の成長を比較してみました。
- 米国のGDP 1992年 6兆5203億㌦ → 2023年 27兆3578億㌦ 約4.2倍
- ダウ平均 1992年 30301.11㌦ → 2023年 37689.54㌦ 約12.4倍
確かに米国経済も成長していましたが、株価はその3倍のスピードで拡大していたことがわかりました。信じられないスピードです。これは一体なぜなのでしょうか?
なぜ好調な市場はより速く拡大するのか?
理由の1つ目は、資金供給量の増加です。少し古いデータになりますが次のグラフをご覧下さい。
これは「週間エコノミスト Online」が、2021年12月3日にアップした記事の中で、資金量と株価の相関を確認するために掲載したグラフです。それによると、日米欧のマネタリーベース(中央銀行が世の中に供給する通貨の総量)と主要な株価指数に正の相関関係が認められました。各国は景気の安定のために資金供給量を増やす傾向にあり、それは高い確率で株価の上昇にプラスに働くのです。
理由の2つ目は、株式市場への資本の集中です。資本とは、その性質上よりリターンの高い市場に集中します。現代の気鋭の論客でマルクス研究家としても名高い斎藤幸平氏は、マルクスの資本についての考えをこう表現しています。
「資本は『お金』ではなく、工場や機械や商品のような『物』でもない。マルクスは資本を”運動”と定義しているのです。どんな運動かというと、絶えず価値を増やしながら自己増殖していく運動です。」(斎藤幸平著「ゼロからの『資本論』」より)
価値を増やすためには、リターンの最も高い米国株式市場に集中するのは当然のことです。米国株がGDPを上回るスピードで成長したのには、こんな理由もあったようです。
理由の3つ目は、Webにより世界がつながったことです。前出の「ダウ平均の長期チャート」を見ると2008年のリーマン・ショックの後、株価が急激に上昇しているのがわかります。ちょうどこの頃、ネット証券の普及によって米国株は世界のどこからでも直接購入できるようになりました。個人投資家の資金が加わったことが米国株の騰勢をさらに加速させた、というのが考えられる3つ目の理由です。
今後なにが起こるのか?
好調な株式市場の成長速度が速まることを理解したら、それに付随して何が起こる可能性があるかも想定しておかなければなりません。ここからはあくまで仮説となります。
株式市場の成長速度が速まるというのは、ある意味バブル的な側面を持ちます。そうなると歴史の必然として暴落が発生します。
NASDAQの長期チャートを見ても、2022年の下落幅は過去に当てはめると「暴落」と言っていい落ち幅です。今後はこの様に「買われ過ぎ」と「売られ過ぎ」の幅が大きくなる可能性があります。
資本がよりリターンの高い市場に集中することを考えると、リターンの低下した市場から資本が撤退することは近年の中国株式市場の例を挙げるまでもありません。同様に買われ過ぎたセクターからは資本が撤退し、別のセクターが買われます。この様な傾向は以前からありましたが、今後はこの「市場・セクター間の資本の循環」もよりダイナミックになる可能性があります。
資金供給量が豊富であるなら、当然それを狙った「新たな金融商品=資金の投下先」が登場します。仮想通貨もこの流れに乗ったものですし、FX(外国為替証拠金取引)もその延長線上にあると考えることも出来ます。今後は、それ以外のまったく新しい金融商品の出現もあるものと思われます。
今回は、「なぜ好調な市場はより速く拡大するのか?」を検証しました。今のところ中国株もインド株も米国株式市場の対抗馬にはなりませんので、米国株は上昇を続けるものと考えられます。もしそうであったとしても、私達個人投資家はその時になにが起こるかを想定しながら投資をする必要があると思います。ではまた!
[…] 以前、「株式市場の拡大は加速する」の回でも説明しましたが、資本はよりリターンの高い投資対象に集中します。現在はそれが「マグニフィセント・セブン」の7社に当たります。 […]